酸素濃度測定
ジルコニア式酸素濃度測定とは – 第1回, PST22-04
ジルコニア式酸素濃度測定とは-第1回, PST22-04
酸素計の測定原理の基本
「酸素(濃度)」を測定する
では、どんな酸素濃度計を選択したら良いでしょうか?
驚くほどに測定レンジが広く、とてつもなく高精度で、並外れた応答速度を持っていて、表示分解能も低く、物凄く多機能で、びっくりするほど不具合が発生しない、そのような素晴らしい酸素計であっても測定環境に適していなければ、正確で安全な酸素測定は実現できません。
サンプリングシステムを完璧に仕上げ、モニタリング体制も万全に構築し、良い製品を導入しても、測定環境に適していない測定原理を用いている酸素計を取り付けてしまえば台無しです。
酸素測定に限ったことではありませんが、測定環境(アプリケーション要件)に適した測定器を選択することが、安全かつ正確な測定を実現することにとって重要です。
酸素計を選定するにあたり「測定原理」は、重要な選択項目の一つです。
今回は代表的な6つの酸素測定原理のうち、もっともポピュラーな「ジルコニア式酸素測定」について簡単に解説します。
酸素計の代表的な測定原理
①ジルコニア(濃淡電池)式
② 電気化学(ガルバニ電池)式
③ 磁気式
④ 光学式
⑤ レーザー分光式
⑥ 黄燐発光式
ジルコニアとは
ジルコニアとは、一般的にジルコニウムの酸化物である酸化ジルコニウム(ZrO2)を指します。
純粋(酸化物無添加)なジルコニアは、高温からの冷却に対して弱くひび割れなど破損すすることがあります。
純粋なジルコニアに酸化物(酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウムなど)を添加することで機械的強度が増し、様々な産業部材として使用されます。
この酸化物を添付したジルコニアを安定化ジルコニアと呼び、燃料電池の部材、酸素センサー検知部、歯科治療材料、セラミックの刃物などに使用されています。
純粋なジルコニアに4%~15%の酸化物を添加したものをキュービックジルコニア(立方晶ジルコニア)と呼び、模造ダイヤモンド(人工ダイヤモンド)として広く使用されています。また、モアサナイトを使用した人工ダイヤモンドは、キュービックジルコニアとは結晶構造が異なるため「ファイヤ」や「硬度」が異なります。
ジルコニア式 酸素センサーとは
ジルコニア式酸素センサー(酸化ジルコニウム酸素センサー)は、酸素濃度%を測定するのではなく、ガスまたは混合ガスの酸素分圧を測定します。
酸化ジルコニウムセンサーは、固体電気化学セルの原理に基づいています。 イットリア安定化酸化ジルコニウム層は、通常+600℃~+700℃に加熱されると酸素イオンが高濃度から低濃度に流れる固体電解質(イオン導電性固体)の性質を持ちます。
イオンが位相間を移動すると、内外電極間に酸素濃度比による起電力が発生し、酸素濃度を決定します。
電極間の酸素濃度の差が大きいほど、生成される電圧が高くなり、100%から100万分の1未満(ppmレベル)までの測定が可能になります。
ジルコニア式は、酸素イオンの特性を指して「濃淡電池式」とも呼ばれています。
酸化ジルコニウム(ZrO2)酸素センサーの特長
● 固定電解質
● 乾式
● 酸素イオンの淡から濃への移動を補助する
異なる酸素濃度のガスを流すことで酸素イオンに流れが生じ、イオン流が生じることで電流値に差が表れ、電流値を酸素濃度として測定しています。 一般的にはサンプルガスはサンプルより濃度が低いものを使用し、電流値(酸素分圧の比)を測定します。
酸化ジルコニウム酸素センサーは、高温下でのみ活性化する特性があり、高温下でないと使用ができません。
酸化ジルコニウム酸素センサーは、そのままサンプルラインに暴露(取付け)するだけで測ることができるので、サンプリングシステムなどの専用の設備を必要としません。 さらに、大気を基準として用いているので、リファレンスガス及び比較用に特別なガスを用意する必要もありません。
しかし、サンプルに可燃性物質が含まれている場合、酸素センサー自身を高温に保っているため燃焼反応を引き起こす危険性を含んでいます。 サンプルライン上に酸素が含まれていたとしても、燃焼反応によって酸化ジルコニウムに含まれる酸素を消費してしまうため、可燃性ガスの測定には向いていません。
ジルコニア式酸素測定原理の背景
ジルコニア式酸素センサーの特長についてさっくりとご紹介したところで、酸素測定原理の物理学的背景についてお話ししたいと思います。
酸素の分圧
分圧は、混合ガスを単一としたガス成分の圧力として定義されます。
これは、単一のガス成分だけで全体積を占める場合の全圧に対応します。
ドルトンの法則
理想気体の混合ガスの全圧(P-total)は、その混合ガス中の個々の気体の分圧(Pi)の合計に等しくなります。
数式(1)…
式1から、”混合ガスの粒子の総数(ntotal)”に対する”個々のガス成分の粒子数(ni)”の比は、”混合ガスの全圧(Ptotal)”に対する”個々のガス成分の分圧(Pi)”の比に等しいことが導き出すことができます。
数式(2)…
niガス中の粒子数i
ntotal混合ガスの粒子の総数
piガスの分圧i
Ptotal前圧
例1:
海面での大気圧(標準的な大気条件下)は、101.325kPaです。
ここで、乾燥空気(大気)の主成分は、窒素(78.08%Vol)、酸素(20.95%Vol)、アルゴン(0.93%Vol)および二酸化炭素(0.040%Vol)です。この乾燥空気は理想気体として近似であるため、体積含有量(%)は粒子数(n)と等しくなります。
式2は、個々のガスの分圧(i)について解くことができ、次のようになります。
数式(3)…
この場合、酸素の分圧は次のようになります。
もちろん、この値は大気が乾燥している(湿度が0%)場合にのみ関係します。 大気中に水分が存在する場合、全圧の一部が水蒸気圧によって占められます。 したがって、相対湿度と周囲温度を全気圧と同時に測定すると、酸素分圧(ppO2)をより正確に計算できます。
最初に、水分含有量を計算します。
数式(4)…
WVP水蒸気圧(mbar)i
HRel相対湿度(%)
WVPmax 最大水蒸気圧(mbar)
既知の周囲温度の場合、最大水蒸気圧(WVPmax)は付録Aの表から参照します。 最大水蒸気圧は、「露点温度」とも呼ばれます。 暖かい空気はより多くの水蒸気を保持できるため、WVPmaxが高くなります。
その場合、酸素分圧(ppO2)は次のようになります。
数式(5)…
ppO2 酸素分圧(mbar)
BP気圧(mbar)
WVP 水蒸気圧(mbar)
以下の例2は、湿度(水分)が酸素分圧を低下させ、酸素の体積含有量を低下させる効果を持つことを示しています。
例2:
一般的に気象観測所には以下の情報(温度、湿度、大気圧)が記録され、得ることができます。
温度 22℃
湿度 32%
大気圧 986mbar
付録Aの表を参照すると、この時WVPMAX=26.43mbarです。
その場合、酸素分圧は次のようになります。
酸素分圧と全気圧がわかったので、酸素の体積含有量を計算できます。
ジルコニア式酸素濃度測定とは - 第2回
第2回では、SST Sensing社が設計開発しているジルコニア酸素センサーの特長について解説します!
ジルコニア式酸素濃度測定とは - 第2回
アプリケーションノートを入手する
本記事のアプリケーションノートはありません。
関連ページ
酸素濃度計一覧 ページを確認する
お問い合わせ窓口
本記事および掲載製品についてのお問い合わせは、下記窓口でお待ちしております。
ミッシェルジャパン株式会社 モイスチャー事業部
info@michel-japan.co.jp
または、「お問い合わせ」 よりご連絡ください。